【内容紹介】
国に自治体への「指示権」を与えた改正地方自治法(2024年)に潜む危うさ、全ての問題点を深く、わかりやすく解説し、警鐘を打ち鳴らす。分権改革で確立した国と自治体の「対等・協力」な関係を、「さながら戦前回帰」と言われるほどに「上下・主従」に逆戻りさせる改正法の内実を、研究者や政治家らへのインタビューを中心にまとめている。 聞き手は元朝日新聞論説委員。第2次安倍政権以降に目立つ、説明責任を果たさない政治のもとでの「国の指示権」の創設が、国から自治体への「上意下達」にさらに拍車をかけることを危ぶむ視点で質問を重ねている。
何が起きるかわからない、という危機への対応を地方自治法ですることへの疑問や、国は指示するだけで、うまくいかなかった時には責任を自治体に転嫁できる構図であるとの指摘、地方議会が蚊帳の外に置かれたことへの異議などが語られている。国会審議で最後まで示されなかった立法事実について、全国知事会副会長が「実は多くの知事はわかっていた」と証言していることも注目される。
改正法の内容解説と、それに伴う条例制定への指針を示した「上巻・解題編」とともに、自治に携わる方々に、ぜひ読んでほしい。
【編者紹介】
坪井ゆづる
(公財)地方自治総合研究所客員研究員。
1958年生まれ。82年朝日新聞入社。長野、北海道勤務を経て、90年政治部員。AERA記者、編集委員、東北復興取材センター長・仙台総局長、論説委員。2018年から夕刊コラム「素粒子」担当。23年退社、24年から現職。日本自治学会理事、京都大学客員教授、日本記者クラブ企画委員などを歴任。現在は「スローライフの会」共同代表。
其田茂樹
(公財)地方自治総合研究所常任研究員。
1973年生まれ。藤沢市政策研究員等を経て2012年より現職。
おもな著作『国税・森林環境税』(共著、公人の友社、2021年)、『自治から考える「自治体DX」』(編著、公人の友社、2021年)、『生活を支える社会のしくみを考える』(共著、日本経済評論社、2019年)、『地方自治論』(共著、弘文堂、2018年)など。日本地方自治学会企画委員、秦野市行財政調査会委員などを兼務。
【目次】
●はじめに(坪井ゆづる)
●幸田雅治さんインタビュー:前代未聞の悪法の改正自治法―問題点をすべて示す
●小早川光郎さんインタビュー:危機対応を、なぜ地方自治法でするのか―分権改革の原則が軽んじられている
●北川正恭さんインタビュー:自己決定と自己責任の覚悟はどこへ―国も地方もいかがなものか
●松本克夫さん寄稿:地方自治法改正批判―「上下・主従」への逆戻りか
●小原隆治さん国会参考人質疑(抄録):自治法が自治法を自己否定している―既存法制で対応は可能だった
●平井伸治さんインタビュー:立法事実はあった コロナ禍で見えた問題点― 附帯決議に歯止め効果 今後の運用が肝心
●保坂展人さんインタビュー:白紙委任で、国と自治体が「上下関係」に―「指示待ち」に陥る危険性を危惧
●岸真紀子さんインタビュー:国会議員に白紙委任を迫る―国会は不要というに等しい改正自治法
●江藤俊昭さんインタビュー:改正法で地方議会は「蚊帳の外」に―条例制定で「歯止め」を掛ける必要がある
●地方議員座談会:どうする、指定地域共同活動団体の条例―随意契約で「癒着」の公然化も 議会の力量が厳しく問われる
〔資料〕 参議院総務委員会附帯決議(2024年6月18日)
●おわりに(其田茂樹)
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