公の図書館の日仏比較 

公立が公共ではなくなるとき
薬師院はるみ 著
定価(本体1,900円+税)
2025年4月7日発行
公の図書館の日仏比較
【内容紹介】
 公共図書館の果たすべき最も重要な役割は、記録された情報を通じて得られる、知識や思想や文化などを公共のものにすることである。日本の図書館制度は先進国の中で立ち遅れてきた歴史があり、「国をおおう図書館のサービス網」を築くという目標が半世紀前に掲げられた。それから館数は増えたものの、いまだに十分にその目標は達成されないばかりか、昨今では公共図書館の縮小再編や職員の非正規化が進展している。日本の図書館では、住民目線による運営が重視されてきた経緯があり、中央集権的な図書館政策は嫌われてきた。しかしながら、住民目線にこだわりすぎることで消費者迎合的な運営となり、本来の図書館の公共性を担保する機能がないがしろされている。一方、日本と同じく図書館制度が遅れていたフランスでは、<上>からの政策と規制により図書館運営を発展させてきた。両国の公共図書館を比較することで、日本の図書館の政策の問題点を洗い出す。

【目次】
Ⅰ みんなに本を。 どこでも・だれでも・どんな本でも
 1 遅れています日本の図書館
 2 〈アングロサクソンかぶれ〉からの出発

Ⅱ いつどれだけ何のために開くのか
 1 フランスの場合
   フランスは「図書館発展途上国」?
   もっと開こう!
   よりよく開こう!
   けれども、日曜日には働きたくない

 2 日本の場合
   「図書館をもっと開く」議論のきっかけ
   外部委託による年中無休・夜間開館
   足立区の場合
   週休二日制と三ない主義
   開館時間の延長と図書館職員の非正規化

Ⅲ 地方分権下での公共図書館政策
 1 フランスの場合
   地方分権と地方分散
   地域拠点図書館
   図書館法
 2 日本の場合
   地方分権に伴う規制の「緩和」 
   各地域の自助努力による図書館振興
   「勧告的立法」としての「図書館法」
   「定番の物語」がもたらしたザル法礼賛論

Ⅳ どこでも、だれでも、どんな本でも、みんなの手に届くものにするために

【著者紹介】
 金城学院大学文学部 教授(図書館学)。博士(教育学、論文博士、京都大学)。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程生涯教育学講座(図書館情報学)研究指導認定退学、金城学院大学文学部専任講師、准教授を経て2014年より現職。
 著書に、『図書館・図書館研究を考える : 知的自由・歴史・アメリカ』(共著、川崎良孝編、京都大学図書館情報学研究会、2001)、『図書館情報専門職のあり方とその養成』(共著、日本図書館情報学会研究委員会編、勉誠出版、2006)、『名古屋市の1区1館計画がたどった道 : 図書館先進地の誕生とその後』 (八千代出版、2012)、『図書館制度・経営論 : ライブラリー・マネジメントの現在』(共著、安藤友張編、ミネルヴァ書房、2013)、『フランスの公務員制度と官製不安定雇用 : 図書館職を中心に』(公人の友社、2019)、『公共図書館が消滅する日』(共著、牧野出版、2020)などがある。