私たちの世界遺産 1 持続可能な美しい地域づくり 世界遺産フォーラム in 高野山 |
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五十嵐敬喜 アレックス・カー 西村幸夫 編著 公人の友社 定価(本体1,905円+税) 2007年11月20日発行 |
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世界遺産は人・モノ・文化・自然、そしてそれらが織りなす風俗等、総合力の評価であり、環境そのものの普遍的価値を再確認するための最も優れた仕組みであると確信しています。 世界遺産条約について学び始めてから数年後の1999年、パリの世界遺産センターでレクチャーを受けた際、私を含めた日本人の世界遺産観の誤りに明確に気がつきました。 世界遺産は1972年に制定されたにもかかわらず、我が国がこの条約に締約したのは、なんとそれから20年後の1992年のことです。このことからも想像できるように日本人は世界遺産には興味がなかったのです。それが一転してこの数年は異常なほどの登録要望が各地で噴出し、それはブームといってもよいほどです。 もとよりブームには功罪があります。私は昨今の世界遺産登録運動を見ていて罪の部分が気がかりです。世界遺産条約、ないしは世界遺産の本質を理解しないままに「世界遺産」というタイトルだけに惑わされ、世界遺産を誤解したまま登録にいたるということは、地元民だけでなく全人類にとっても誠に不幸なことです。 地球上には国家、宗教、文化、経済などを超越した普遍的価値をもつ場所や事柄が数多く存在します。それは、それを生み出した人々だけの誉れや文化度の誇示ではなく、人類という生物共通の大いなる遺産であると認識できる人をより多く増やすことによってのみ、初めて条約の真の意義が達成できるのだと思います。 とはいえ、主に西洋の概念で構築された条約の理念は、我が国がもつ登録遺産候補を正確に評価し、リスト化するには不具合もあることは事実です。 -中略- このように日本を含む東洋の価値基準を世界中に知らしめていくという仕事も、世界遺産登録地域に課せられた責務です。 そういう意味でもこのフォーラムの取り組みは重要で、今後継続して各地で開催されていくことを期待しています。 (「あとがき」より) 目 次 はじめに 高野山宣言 巻頭論文 何故、今「世界遺産」なのか 基調講演1 美しい日本の残像 World heritageとしての高野山 基調講演2 世界遺産検証 世界遺産の意味とj今後の発展方向 論究1 世界遺産としての高野山 論究2 世界遺産をどうやって持続させるか? パネルディスカッション 持続可能な美しい地域づくり ・原爆ドーム 世界遺産化の経緯と景観問題 ・世界遺産登録準備進行中「武家の古都」鎌倉 ・暫定リストに記載 長崎の教会群とキリスト教関連遺産 ・鞆の浦の文化的景観保存運動 ・解消したい「世界遺産」についての「誤解」 ・最後に一言 閉会にあたって 資料 日本における世界遺産(候補地含む)の現状と課題 |