可奈子への手紙シリーズ9 天網恢恢(てんもうかいかい) お天道様は見てござる |
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船越準蔵(元秋田市立山王中学校長) 著 公人の友社 定価(本体1,400円+税) 2009年8月20日発行 |
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かつて中学校校長として学校荒廃の嵐に立ち向かった筆者による「可奈子への手紙シリーズ」最新刊です。 仮想の新米教師「可奈子」への手紙を通じて、その教育論や子どもたちへの思いをつづってきた同シリーズですが、今回は、やがて定年を迎えるであろう可奈子へ向けて、「幸せ」について、「老い」について、「やさしさ」について等々、著者自らの人生観を語ります。 「天」が多忙で手が回らず、現世で罰を受けなかった人は、死後あの世で罰を受けます。あの世でも罰を受けなかった人は、「来世」で必ず罰を受けます。理由もわからず何かよくないことが起こったとき、よく「前世からの因縁だ」といわれるのはそのことです。 このことを中国古代の伝説的思想家「老子」は、「天網恢恢、疎にして漏らさず」と言ったと伝えられています。 「『天の網』は広く大きく、その目はあらいけれども、どんなに小さなことでも見逃すことはない」という意味です。 大臣とか、官僚とか、教授とか、企業の経営者ともあろう人が「天網恢恢」を知らないはずはありません。にもかかわらず、贈収賄、偽装、脱税などの悪事をするのは、「天網」を本気にせず、ナメてかかっているからです。 この人たちに限らず、今の世の大人のなかには「見つかるとは限らない」と思っている人が大勢います。そういう大人のなかで育っている子どもたちが「天網恢恢」を畏れることを知らないのは、当然です。 (「天網恢恢」より) 「可奈子への手紙」を書き始めてから20余年を経た。その間に読者の方からたくさんの質問・意見・感想をいただいた。その都度、お返事を書くように努めたが、毎度のように「誠実に答えていないな」という不安感が残った。お便りのほとんどは、教育の具体的な対処を問題にしているように見えながら、実は私の考えている「人間性」とか「人生」とか「幸せ」とかの思想の中身を問うているように思われたからである。 手紙の相手方として想定した私の「可奈子」も、すでに熟達の教師となり、まもなく還暦を迎え、定年退職し、高齢者となる。いま私が「可奈子への手紙」に書くべきことは、教育の知識や方法のことではなく、私の歩んできた足跡のことではないかと思う。 この二つの思いから、第9集は短編随想集とした。 (「あとがき」より) 目 次 一 お天道様は見てござる 1 天網恢恢(てんもうかいかい) 2 天国のお百姓 3 天の配役 4 歌劇「トスカ」 5 幸せのありか 6 どこかに神様が 二 高齢を生きる 1 百歳の計 2 長寿の覚悟 3 時代の語り部 4 長生きコロリ 5 臨終もまた楽し 6 お葬式の今昔 三 袖ふれ合うも 1 多生の縁 2 知らない人 3 嫁と仲良く 4 偕老同穴(かいろうどうけつ) 5 同級会 6 敬老会 四 やさしいから人間 1 育てる者の高き志 2 為政以徳 3 不義ニシテ 4 自覚なき加害者 5 驕れる人 6 死んでも言うな 五 幸せのうた 1 退職の挨拶状 2 朝令暮改 3 人柄の時代 4 塞翁が馬 5 操行「優」 6 幸せのうた Y 打算 1 楊守全博士 2 起立多数! 3 金色夜叉 4 愛の伝承 5 無財の布施 6 友の座る席 あとがき |