「自治体憲法」創出の地平と課題 上越市における自治基本条例の制定事例を中心に |
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石平春彦(上越市議会議員) 著 公人の友社 定価(本体2,000円+税) 2008年12月25日発行 |
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日本の地方分権改革は、21世紀に入り、新たな市民自治の質を伴いながら、大きなうねりとなって着実に前進している――。 それは、国政の流れを肯定的に捉えてのことではない。三位一体改革や平成の大合併における国(「お上」)からのかけ声に翻弄され、一段落した今、期待と現実との落差に悲観している立場からは、見えてこない光景かもしれない。あるいは、これとは反対の立ち位置から、政治を常に評論的に批判し斜め見してきた立場からも、同様のことが言えるだろう。 しかし、時代と切り結ぶにあたって、どこまでも主権者である市民に依拠し、市民の可能性を信じ、市民自治を拡充することに力を注いできた立場からは、未来への希望と自らの更なる決意をこめて、そのように映ることも、また疑いのない事実なのである。 その象徴的な動きが、全国で澎湃とわき起こっている、いわゆる「自治体の憲法」と言われる「自治基本条例」や「まちづくり基本条例」の制定の取組(運動)である。 本小論は、その取組の全国的な動向と主要事例を概括しながら、現時点での到達点とも言える上越市の事例を具体的に取り上げることによって、自治の現場から自治体憲法創出の地平と課題を明らかにし、更なる市民自治の深化(進化)と拡充、引いては地方分権改革の進展に寄与しようとするものである。 「はじめに」より 目 次 はじめに 一 全国の自治基本条例制定の動向 1 制定の時代背景と内生条件 2 条例の対象と実際 3 全国の主な条例30の概括 二 上越市における自治基本条例の制定過程 1 制定表明から14市町村の合併まで 2 新市における市民会議の設置と検討 3 市議会内(特別委)の議論 4 市民会議と市議会の意見交換会 5 市民会議代表者会での検討(その1) 6 庁内検討委員会と事務局 7 本会議での市長との論戦 8 「提言書(条例案)素案」に対する議会の意見集約 9 市民会議代表者会での検討(その2) 10 市民会議全体会の最終協議と提言書の提出 11 議会意見及び市民意見の反映 12 条例案を全会一致で可決 三 上越市における前史=先行制度導入の取組 1 先行制度の実際 2 政策法務実践の10数年 3 体系化、結晶化へのいざない 四 上越市自治基本条例の理念と特徴 1 全体構成としての特徴 2 自治体の存立基盤を明記 3 団体自治の確立 4 自治の理念における普遍的価値 5 自治の基本原則 6 市民の権利 7 市議会を積極的に位置付け 8 市長等 9 市政運営 10 都市内分権 11 参画と協働 12 市民投票 13 見直し、改正手続 五 市民自治のさらなる深化と拡充に向けて 1 自治基本条例を自治体憲法へ 2 憲法を初めとした法制度の改正を 3 草の根からの市民主権・地方主権運動へ 注 上越市自治基本条例 巻末資料 |