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政府はこの度、財政健全化方を制定し、自治体の財政運用の監視システムを強化したが、自治体財政の自立的運営を損なってきた地方財政の欠陥構造・メカニズムには、メスを入れていない。これでは地方財政破綻の震源地はそのままであり、再度、財政破産団体が発生する恐れがある。
一方、自治体は減量化に懸命であり、財政再建団体への転落を必死に防ごうとしている。しかし、昨年末、大阪府でも3,500億円の赤字隠しが発覚したように、自治体の官僚的病巣は蔓延しており、公会計・市民統制による浄化システムの形成が焦眉の課題となっている。
健全化法が、地方財政破綻の予知・予防機能を発揮でき、公会計形成をつうじて財政運営の適正化に貢献するかどうかは、政府・自治体の今後の対応にかかっている。
地方財政健全化施策の実効性を定着させるため、財政破綻の典型的事例として、外郭団体破綻で注目された北海道夕張と、平成合併の財政危機で関心の集まった篠山市を対象にして分析した。
両市とも財政悪化にもかかわらず、早期診断、早期治療に失敗している。
政治的には首長の政権への執着心、財政的には財政診断の義務化・公開化、運営システムの政策科学化の欠落が致命傷となった。
このような事態をふまえて自治体財政運営健全化のあるべき方向と、地方財政制度改革の処方箋を描いてみた。
(はしがきより)
目 次
はしがき
第1章 夕張市財政破産と自治体経営
1 財政破産原因の類型化
2 夕張市財政破産と経営倫理の崩壊
第2章 篠山市財政危機と合併特例債の功罪
1 合併特例債活用の後遺症
2 合併後の財政運営と財政再建計画
第3章 財政健全化法と地方行財政改革
1 財政健全化法と破産予防機能
2 財政運営責任と自治体改革
3 財政健全化と地方財政改革
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